大鯰

　　　　こちら向き一輪咲きいるクアレズマを読みし手紙の結びに結ぶ

　　　　この夏の声が聞こえぬ　立ち枯れて油蝉こぬ大樹もあわれ

　　　　一本のストローとなり花の蜜を吸いつづけいる朝の蜂鳥

　　　　朱のピアス一樹にかけて午睡かな道に少女の姿が見えぬ

　　　　裏庭のバナナ大葉のいたましさ街にも山にも降らぬ雨待ち

　　　　青ざめた熊が小声に抱いてよと言うて震える玩具屋の前

　　　　風吹けばユーカリの声椰子の声草も叫びて雨呼ぶを聞く

　　　　スコールのアボカド大葉を打つ音を夏咲くものへの喝采と聞く

　　　　大鯰のバケツのごとき大口が煮くずれてきて汝には笑窪

　　　　なべて目を光らす生き物恐ろしく蛍にのべぬわが手を握る

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