暗き森

　　　　売る画持ち指先白くなる街の無援のわれに開け自動扉

　　　　サンパウロの何処かにある　探しえぬ野菜恋しい鍋の空間

　　　　ブルメリアもげて滴る乳は地が吸いてしまいぬ実母も斯くや

　　　　おさならの怖がる暗き森にして暮れてわが切るブロッコリの森

　　　　自らの色なき水が透明な器の中に月を抱きぬ

　　　　南天の下葉のはつかな紅葉をなぶる風あり母の日の前

　　　　いと甘きジャッカに千の棘ありて重なりうからの傷深めおり

　　　　またひとり一人と逝きて故郷は徐徐に褪せゆく写真のごとし

　　　　賜わりし黄色い花の暮るるまで客ととけ合う黄の花となり

　　　　日本の雀と同じ服を着た雀らの宿が土手の一樹は

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