七月の洗顔の水凛と冷え頬を打たれてわれを我とする 毛の深き赤目の芋を剥きながら持ちきし移民の故郷をしのぶ 愛しあう土亀の声と教わればレモンも木陰もせつなくなりぬ 哀愁を二世の声に出させんと声くもるまでビブラート教ゆ 通訳をつけねばならぬ診察に新来移民の鬱かえりくる 賛美歌の流るる中で焼香し昔のえにしに深く礼をしぬ 咲きし順にデンドロヴューム散り終わり光を吸うもの一つ消えにき 「この礼は神がしますよ」家家に乞食の言いて忙しき神 空しきは慰めるべし藍染の一反ふろしきスカートのしぬ 片頬の笑みを残して帰りたる友は失業か影ほそくして カスタードクリーム作りこのうから和えてみようか優しさ増さん 老牧師に告げざりしもの目覚めいて鶏鳴く刻よりわれに夜くる 蹴り上げし空缶めがけ少年は黒豹となりわが前を去る
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